I LOVE TCG

蜘蛛やゾンビが舞い踊る……イシュカナ様をお守りします!

【MTG】カードデザイナー公募企画、Great Designers Search 3の設問を解く

 

2017年12月4日、マジック;ザ・ギャザリングのカードデザイナーをweb上で公募する公式企画、Great Desiner searchの第三回目がM:TG公式ホームページで告知された。

 

 

(記事中の画像はすべて、M:TG 公式ホームページより引用)

 


GDSでは、エントリーシート代わりとなる論述問題(この記事で解説)、

予選ラウンドでの選択問題およびデザイン問題をクリアしたうえで、

本戦では5つの異なる条件下で複数カードのデザインを行い、現役デザイナーやディベロッパーたちの審査をパスしなければならない。

(なお、応募にはアメリカ合衆国での長期就業資格を持っている必要がある)

 

 

「カードを作るのは君だ!/You Make the Card!」と並び公式によるオリカデザイン企画ということで、試験内容公開後に自分も嬉々として全設問に回答してみた。

 

 

今回はその第一問目、エントリー時に行われる10の論述(エッセイ)問題について。

質問内容は以下の通り。

 

  1. 自己紹介をして、なぜ自分がこのインターンシップにふさわしいか説明せよ。

  2. 常磐木メカニズムとは、(ほとんど)すべてのセットで登場するキーワード・メカニズムのことである。既存のキーワード・メカニズムを常磐木にする必要があるとしたら、どれを選ぶか。またその理由は。

  3. 現在常磐木メカニズムであるキーワード・メカニズムを1つ常磐木でなくさなければならないとしたら、どれを選ぶか。またその理由は。

  4. あなたはマジックを見知らぬ人に教えることになった。最良の結果を得るための戦略は何か。

  5. マジックの最大の長所は何か。またその理由は。

  6. マジックの最大の欠点は何か。またその理由は。

  7. マジックのメカニズムの中で、最ももう一度機会を得るべきものは何か(つまり、それの潜在能力に比べて最初の導入が最悪だったものは何か)。

  8. あなたがこれまでにプレイしたマジックのエキスパンションの中で、お気に入りのものを選び、それの最大の問題について述べよ。

  9. あなたがこれまでにプレイしたマジックのエキスパンションの中で、一番気に入らないものを選び、それの最高の部分について述べよ。

  10. マジックについて何か1つ変更することができるとしたら、何を変更するか。

 

 

 

このうち、自己紹介とかを除いたクリエイティブ・デザインにまつわる部分にだけ回答してみた。

回答は以下:

 

 

 

Q1:自己紹介をして、なぜ自分がこのインターンシップにふさわしいか説明せよ。

 

A1:(省略)

 

 

 

Q2:すでに存在しているキーワードを常盤木にするならどれを選ぶ? その理由は?

 

A2:過去にLatest Developmentで多用途性の面から否定されていたが、サイクリング

 

マナスクリューとマナフラッドはMtGの土地システムが持つ避けえぬ構造的問題だが、サイクリングはその両方の土地事故をケアしてくれる。

単体では存在しえないニッチな対象やニッチな機能のカードも、サイクリングを与えることでデザイン成立の可能性を与えられる。

 

たとえば《骨組み溶かし/Molten Frame》のようなカードはサイクリングがデザインを成立させた好例だ。

 

骨組み溶かし

サイクリングの常盤木化は各セットの、特に低レアリティのデザイン空間を広げる。
土地事故問題のパッチだけでなく、デザイン空間拡張の観点から見てもサイクリングの常盤木化は有用だと考える。

 

 

Q3:常盤木からキーワードを1つ外すならどれ? その理由は?

 

A3:到達

 

MtGの戦闘システムはブロック側優位で硬直性が強いため、ゲームが冗長化しやすい。盤面の停滞を防ぎ、ゲームを終了へと誘導するためには回避能力といった個別カードレベルでのパッチが必要になる。

 

到達はそのパッチを妨害するだけのディフェンシブに偏りすぎた能力であり、盤面の動性に対してネガティブな機能しかない。
また注釈文に他のキーワード能力を参照するのも常盤木として醜い。


到達を廃する場合、蜘蛛や射手の対飛行性は、飛行のみを凍結(タップしてアンタップさせない)や飛行のみをレンジストライク、飛行のみを《忘却の輪》などで表現したら良いと考える。

 

 

Q4:あなたはマジックを見知らぬ人に教えることになった。最良の結果を得るための戦略は何か。

 

A4:常に同程度のカードプールで対戦をすること。

 

もし新規プレイヤーが3パック買って始めるなら、自分も3パックを買い、同じ卓上でカードを広げ、一緒に構築をしながら対戦する。PWデッキを買って始めるなら、自分もPWデッキを同様に買って対戦する。そのプレイヤーがパックを買い足したいと言ったなら、自分も同じだけ買い足す。

 

デジタルのMTG対戦ツールは勧めない。最初からデジタル専用として設計された競合他社のプロダクトと比較して、デジタル上の動作が煩雑なMTGを勧める理由が強くない。

 

なのでデジタルツールは機能を対戦エミュレータだけに振り切るのではなく、これまでのストーリーや世界設定、各キャラクターを未見のプレイヤーへと伝えるインタラクティブなワールドガイド的要素をもっと色濃くしたほうが良いように思う。

 

 

Q5:マジックの最大の長所は何か。またその理由は。

 

A5: TCGというゲームジャンルのオリジンであること。

 

TCGはジャンル的にゲーム性での差別化の幅がそう広くない(一番大きいのがキャラクターゲームか戦略ゲームかの軸で、「事前の構築要素があるカードを用いた対人ゲーム」という大元のプレイフィールにそこまで幅がない)。

 

なのでゲーム性以外の要素での差別化が重要になるが、MtGTCGタイトルとして唯一無二の要素、すなわち「オリジナルであること」を確立している。

 

どの分野に置き換えてもそうだが、あるジャンルに対して新規に参加する初心者にとって、「そのジャンルの起源であること」は常にもっとも単純で、もっとも分かりやすい選択理由の一つになる。

TCGジャンルのオリジンであること」、それ自体が新規プレイヤーの選択負担を和らげ、参入障壁を軽減するメダリオンのような役割を持っている。

 

歴史は後発がどれだけ努力し望んだとしても決して獲得できない。オリジナルであること、その不変的なブランドこそがMtG最大の、唯一無二の長所であると考える。

 

 

(正直いってこの項目は何を書いたらいいかぜんぜん思いつかなかったのでポエムになっちゃった……) 

 

 


Q6:マジックの最大の欠点は何か。またその理由は。

 

A6:土地事故という最悪のプレイ体験をもたらす、土地リソースシステム。

 

リソーストラブルの存在それ自体については、必ずしも全否定されるべきものではない(ゲーム展開に揺らぎを与え、同程度の習熟度のプレイヤー同士の勝敗が究極的にはマッチアップの相性差だけに収束してしまう単純化を防ぐ)が、それは最低限ゲームの体裁が保証されている場合に限る。

 

 

「プレイヤーの選択が勝敗を決定する」というのがゲームの大前提とするなら、最悪の土地事故はその前提にさえアクセスできなくする。カードをプレイする、その有為的な選択の機会を一方だけが受け取れず、サンドバッグとなってゲームを終える。はっきり言って、それはもはやゲームではない。

 

カーレースに参加し、対戦相手と競いゴールを目指す。だがスタート時にあなたの車にガソリンが入っているかは運否天賦である。そのようなものをゲームとは呼ばないのと同じである(それはクジだ)。

 

前述したようにリソーストラブルはあってもよいが、それには最低限の選択肢へのアクセスがプレイヤーに与えられたあとに発生するように設計されていなければならない。

現状の配牌に依存するランダムな土地カードにすべてのプレイリソースを依託するシステムは、残念ながらそう設計されているとは言いがたい。リソース部分は変更可能であれば真っ先に変更されるべき構造的問題であると考える。

 

なお細かな部分でいえば、土地のような重要度の低いファクターが盤面の半分を占めることは、現代のような動画配信サービスとの連携が必然的な時代において観戦者の注視を拡散させるデメリットも(わずかではあるが)ある。これはデジタルの対戦ツールでも同じ。

 

 

 

Q7:再録すべき(もっとも過小評価されている)メカニズムは何か?

 

A7:明滅/Flickering

 

明滅は赤の新しい、普遍的なカラーパイになりうると考える。
たとえば「タップ状態で戦場に戻す/Return it tapped」の一語を足すだけでブロック阻害の機能が加わり、このメカニズムは非常に「赤く」なる。

 

《解放(INV)》のような時間差の復帰は白に、《雲隠れ(AVR)》にタップ状態を加えたような即時的な復帰は赤へと分譲できると思う。

前者には救出や旅路のフレーバーがあり、後者には地割れなどの地理的な撹乱や混沌のフレーバーを読み取れる。

 

Liberate

雲隠れ

 

現在の明滅は二つの異なる復帰タイミングが併存しており、特に初心者に混乱を与えている。

ブリンクを《解放》と《雲隠れ》で色別に分配することは、こういった初心者の混乱を取り除くことにも役立つと考える。

 

 

 

Q8:あなたがこれまでにプレイしたマジックのエキスパンションの中で、お気に入りのものを選び、それの最大の問題について述べよ。

 

A8:テーロス。

 

神や授与クリーチャーはその特別性を強調するため(他の雑多なクリーチャー・エンチャントと挙動の違いを明確化するため)、機体のようにP/T欄のテキストスタイルやレイアウトを変化させてもよかったように思う。

 

テーロスに限らず言えることだが、テキストボックス欄を含めた書式/レイアウトデザインの領域は、プレイアビリティおよびUI向上のために変更できる余地がまだ大量に残されている空間のように思える。

ゲーム内でのテキスト挙動を鑑みてボックスの枠線や書式を変えたり、ボックスのレイアウトや個数を変えたりなど。

 

 


Q9:あなたがこれまでにプレイしたマジックのエキスパンションの中で、一番気に入らないものを選び、それの最高の部分について述べよ。

 

A9:戦乱のゼンディカー。

 

無色・ランプ以外にこれといった個性を持たなかったエルドラージ部族に、暴食性から嚥下および昇華というメカニズムを見出し、ウラモグの特性に設定したこと。

その異色さ、メカニズム的な収まりの悪さが、逆にエルドラージという異質でグロテスクな部族に美学的にフィットしているように思う。

 

 

 

Q10:マジックからなんでも一つ変えられるとしたら何を変える?

 

A10:リソースシステムを土地からDMのマナチャージ型にする。それ以外なら、「他のカードの上にカードを重ねる」ことを基本システムレベルでデザイン可能にする。

 

サイコロが「振る」ことをアフォードするように、薄い紙は「重ねる」ことをアフォードする媒体だと考える。

これはカードというメディアが必ず持つ物理的な特性であり、この性質は活用すべき資源だと考える(サイコロを用いておいて「振らせない」ゲームはない)。

 

 

 

 

 

以上。

 

GDSの設問はエントリーテスト問題があと2つ、実際にカードをデザインしていく本試験の問題が5つあるので、これも記事にしてぜんぶ答えていこうかなと思います。

 

 

続く: