【MTG】統率者レジェンズ環境分析とプレリレポ
2020年11月14日(土)に行われた統率者レジェンズのプレリリース・パーティに参加してきた。
備忘録代わりにそのレポと簡単な環境の印象を書く。
なお、記事中のカード画像はすべて公式カードイメージギャラリーから引用。
事前の印象
これまでコンスピラシーやバトルボンドのような特殊環境のリミテッドを数回プレイして、得た経験則が自分の中にいくつかあった。
インスタント除去は普段より強く、ソーサリーのピン除去は普段より弱い
多人数戦で特定のプレイヤーにトドメを刺せるような状況になったとき、残りライフ分をちょうど削りきれるようなアタックしか行われないことが多い。
たとえば残りライフ5の相手にはちょうど5点だけ抜けるようなアタックをして、残りの戦力は残存する他のプレイヤーとの攻防に回すことがほとんどだ。
つまり多人数戦ではフルパンによるオーバーキルが生じにくい。
そのためインスタント除去一枚握っているだけで確定死の状況を躱せるシーンがしばしば生まれる。
しかもこのリターンは自死だけでなく、他のプレイヤーの死亡ターンの回避にも使える。要するに交渉の材料になりうる。「あの厄介なエンチャントを解呪してくれたら助けてやる」という具合に。
このようにインスタント除去は通常の1vs1対戦よりも有用なシチュエーションが増えるため、普段より評価を高く設定する。
一方でソーサリー除去はターンが一周するまで三人の対戦相手にマナタップの隙を与えてしまうため、リスクは普段の三倍増しになる。
ソーサリータイミングでの除去はインスタントと違って死亡回避の確約に繋がらないため、交渉役としても信頼性が劣る。
また対処しなくてはならない盤面が普段の三倍に増えているのに、単体除去を撃っても一人分のボードを足止めにしているだけにすぎない。
加えて自分にとっての脅威は他のプレイヤーにとっても脅威であることが多く、その場合は単純に自分だけがマナと手札を消耗して、残りの対戦相手ふたりにタダで利益を与えているだけになる。
というわけで、ソーサリー除去は普段よりも点数を低く見積もる。
回避能力が普段の三倍強い
統率者戦の初期ライフは普段の二倍だが、相対するのは普段の三倍の対戦相手、普段の三倍のクロックだ。
だから自分の5/5のアタックが通ってもゲームに与える影響は普段の1/6と小さく、逆に自分の5/5が守勢に回ることで防げる脅威は普段の1.5倍になっている。
攻勢に回ることのインパクトが極端に縮小しているのがこのフォーマットの特徴といえる。
そのため多人数戦においては120点分のライフを詰める攻撃力よりも自分の40点が詰められない防御力の方が重要になる。
前提は勝利条件を満たすのではなく敗北条件を満たさないこと。
(どっちにせよ120点分を自分ひとりで詰めることなんてできないわけだし)
そういった多人数戦の生存戦略において、もっとも基本となるのが回避能力の有無になる。
飛行は相手のライフを詰めるもっとも基本的な攻撃力だが、それ以上に相手の航空戦力から自分のライフを守ってくれる防御力としての価値が大きい。
たとえば対戦相手全員が2/2飛行を持っている状況では、3/3飛行を一体立たせられるだけで6点分のクロックを防いでくれることになる。
逆に自分だけが飛行をブロックできないような盤面になってしまうと、三人分の飛行クロックに一方的にタコ殴りにされるハメになる。
だから普段は軽視しがちな到達も、いつもより点数高く見積もっていいと感じた。
多人数戦ではどのプレイヤーも「殴る動機」を探しており、中でも飛行をブロックできないことはいちばんシンプルで弁明不能な理由になる。
負けない構築とは、そのような簡単な言い訳を対戦相手に使わせないことでもある。
それ以外でカードプールを見て感じたのは、
- 統治者ギミックがあるのでアドバンテージカードばかり入れてると意外と手札がダブつく
- マナ加速はあるがマナ色のサポートが弱いので、土地は多めに入れる
- 共闘はデッキの初期枚数を減らせる上に手札1枚増なので使い得(二色統率者よりも優先)
といったところ。
そんな事前の環境予測を頭に浮かべつつ開催店舗へ向かう。
総参加者は四人卓が三つぶん立つ程度だった。
《闇の男爵、センギア》のプロモを受けとり、いざ初めての統率者リミテッドの世界へ突入。
カードプール
当たったレアは以下。
シングル価格的には最後のパックで《マナ吸収》を引き当てていなければ盛大な討ち死にだった。
あぶねー
各色ごとに分けたカードプールは以下のとおり。
優秀な飛行と五枚の除去が頼もしいが、枚数はやや不足感がある。
統率者としては確定2ドロップとして優秀な《陽光たてがみの使い魔、ケレス》がおり、重たい共闘統率者の序盤の隙を埋めてくれる。
三種類のレアが引けているが、総合的にはかなり寂しいプール。
生物も除去もほとんどなく、呪文回収やオーラなど用途の限定的なスペルが目立つ。
チャンスがあるとすれば青赤の海賊構築くらい。
基本的には進んで使いたいような内容ではない。
共闘統率者の《センギア》は、それだけで黒を選ぶ理由たりえるほど魅力的。
ただ全体のカード枚数はじゃっかん不足気味で、スペルはコンバットトリックと墓地回収がダブってシンプルな除去がない。
ただ赤と組めば《一座の支配人、ジョーリ》と合わせて生け贄エンジンをうまく利用できそうなプールに見える。
地味に《冒涜する者、トーモッド》と相性のいいカードが多い。
枚数潤沢、除去多し。
飛行も到達もおり、《激憤の宮廷》と《火山の奔流》は間違いなくボム。
海賊が多めで生け贄シナジーは期待したほどではなかったが、今まで見た中だとかなり使いたいプールに入る。
緑なのにクリーチャーの絶対数が足りなすぎ。
そのマナカーブもずいぶん後ろに寄ってしまっている。
スペルも3枚の《古えの憎しみ》(インスタント格闘)と《押し潰す梢》ぐらいしかなく、できれば使いたくないプール。
《巡礼者の目》と《ブレードグリフの試作品》 、《統率者の宝球》あたりはどの構築でも入りそう。
《練達の職人、レヤブ》の価値を決める装備品は四枚。ただその内容はいまいち。
二枚の《海賊のカットラス》が海賊構築いけるかもという幻想を抱かせる。
パッと見た感じだと黒赤の生け贄、赤白の装備、白黒のトークン、青赤の海賊あたりが組めそうな印象を持った。
そんなわけでいざ構築。
デッキ構築
いちばん最初に組んだ構築がこちら。
《センギア》と《ダーゴ》を素直に組み合わせた黒赤生け贄。
前述の理由から《一座の支配人、ジョーリ》よりも共闘統率者を優先する。
ちなみに宝物トークンは1個で《船壊し、ダーゴ》のコストを(3)軽減してくれるので抜群に相性がいい。
どちらの統率者も重いので土地25+マナファクト4枚と厚めのマナベース。
統治者ギミックがあるので、フラッドするよりも土地が詰まるリスクのほうが大きいと判断した(スクリューでターンが飛ぶと、対戦相手が多いぶん普段の三倍リソースの差がつく)。
ただ4マナ域が過剰で、低マナ域が絶望的に薄い。
3枚の《ダイアモンド》をカウントしても不足感を感じるラインナップ。
黒のスペルがどれも状況を選ぶものしかなく、もうすこし質のいい除去などが欲しかったというのが正直な印象。
重たい生物が多く、維持できれば単体で勝てるクリーチャーも多いので、《超常的耐久力》を数枚差し込んでもいいかもしれない。
次に組んだデッキがこちら。
前述のとおり白で組むと《陽光たてがみの使い魔、ケレス》が2ドロップを確定してくれるため、低マナ域を埋める必要がなくなるのが強み。
おかげで《練達の職人、レヤブ》以外の2マナ以下の生物をデッキから取り除くことができた。
そう考えると土地25+マナファクト2枚は過剰か。数枚を《魂の火》に差し替えてよさそう。
飛行か《ターゴ》に装備品をつけて殴るというコンセプトの明確性は好感触だが、4枚ある装備品の性能がそれほど高くないのが気がかり。
いちおう赤白二色の組み合わせはもっとも多く除去を採用できる(9枚)プールでもある。
この後、青赤海賊や白黒トークン、黒緑エルフを試したが、どれも完成度でこの二色に劣る印象を持った。
特に青に関しては海賊で組めなかったら他に選択肢がないようなカードプールだったので、構築の早い段階で色ごと切り捨てることになった。
黒赤サクリファイスか、赤白装備品か。
時間目いっぱい使って悩みに悩んだすえ、赤白を手に取ることにした。
決め手になったのは回避能力の多さとスペルの性能差で、これははっきり白>黒と明暗が分かれた。特に黒は異なるアーキタイプのパーツが多く、1枚1枚の方向性がバラバラだった。
不安点があるとすれば、統治者以外にアドバンテージ手段の薄い前傾アグロが3人×40点を削りきれるのかという部分。
こればっかりはこのフォーマットを体験してみなければわからない。
というわけで着席し、いざ対戦。
対戦結果
vs 青黒再演ドレッジ
緑青続唱ランプ
赤緑エルフ
1ゲーム目が一時間超えのすさまじいロングゲームになった結果、二ゲーム目も同卓で対戦することに。
結果はどちらも2~3位あたりで、青黒の再演ドレッジが二回とも1位。
共闘統率者二体のシナジーが美しく(宝物生け贄でネイディアが育つ)、宝物によるマナ加速で《ファイレクシアの三重体》の再演も余裕、という横綱デッキだった。
目立たないナリをしているが、《マルコム》は単色共闘の中ではトップクラスに強力な統率者だと感じた。
前述したように回避能力が環境内で根本的に強く、単純にマナ加速が強力なだけでなく宝物トークン自体があらゆるシナジーの発生源になる。
コンスピラシーの時もそうだったが、多人数戦では全員のライフを均すように調整しながら全員同時にレッドゾーンに突入していくようなライフ遷移が多い。
そのため危険水域に入った対戦相手を全員同時にハイパワーで刈り取れる、高スタッツ再演のインパクトは非常に大きく感じられた。
一方赤白装備品の手応えはどうだったかと言うと、「思ったよりもやれる」というのが正直なところ。
ただ「一人二人なら殴り倒せるが一位にはなれない」という赤白の宿業のような印象も持った。
愚直にコンバットを介して各個撃破するしかない以上、どうしても交戦後の消耗時に漁夫の利を取られてしまいやすい。
この手の直進デッキが一位になるには、たとえば《燃えさし爪の使い魔、ケディス》みたいな飛び道具が必要かもしれない。
そんな感じの統率者プレリ体験だった。
正直このフォーマットは抜群に面白い。
もちろんカジュアル的な意味でだが、今までのリミテッドでいちばん好きかもしれない。
盤面に落とされたボムの処理を巡って交渉が白熱し、厄介なエンチャントを解呪したプレイヤーに喝采が飛ぶ。その恩のために勝ち目の薄い戦いに挑み、英雄になることもあれば、敗残者同士で肩を叩きあうこともある。
構築の正解、プレイングの正解を追求せずとも楽しめる度量の深さは多人数戦ならでは。
プレリとは文字どおりプレリリース「パーティ」、カードで遊ぶ「祝祭」なのだと実感できた四時間だった。
統率者リミテッドパックが毎年の定番商品になることを願わずにはいられない。
いやー、本当に面白かった。